こんにちは。
デザイングループのOです。
デザイングループでは、隔週で『デザイン検証会』というものを行っています。
日々個別で仕事をすることが多く、なかなかデザインについて話すきっかけがないため、『デザイン検証会』という名目で、自由に意見を出し合ったり、情報を共有したりしています。毎回進行役がローテーションで変わっていき、その人が議題や検証会の流れなどを自由に取り仕切っていきます。
私が進行役で行った回が印象的だったので、ブログにしました。
今回は『フォント』に注目して検証会を行いました。皆さんが何を基準にフォントを選んで、配置をしているのかが気になり、ワークショップ形式で実際にチラシを作成していただきました。
▼準備したもの
・10種類のフォントを用意した紙(文字はタイトルと人物名)
・実際にある展示会のチラシからタイトルと人物名を消した紙
文字をハサミで切り、フォントの種類や配置位置などを自由に決め、のりで貼っていただきました。 この展示会のテーマなども説明して、皆さんに20分間で取り組んでもらいました。(※実際のチラシは見ないで行ってもらいます)
みなさん黙々と作業して、紙を切る音だけが会議室に響いていました。
今回使用させていただいた実際のチラシはこちら
『とどまって、聞いている』白井茜
展示に寄せて
2020年の夏から、多胡家と白井家二つの家族を撮り始めた。きっかけは「家族とは何か」という一つの問いだったが、撮影を進めていくうち、安易に答えなど出せないことが分かった。日常の中に小さな喜びを見つける、彼女たちの豊かな視点に驚かされる一方で、日々変化していく身体の様子や、互いを家庭に縛りつける一面が、生々しく映し出されていた。そこには思い描いてきた生優しい家族像はなく、私はただカメラの前で立ち尽くすことしかできなかった。 撮影を始めてから2年ほどが経ち、これまで撮った素材を見ているうちに、私は自分の家族との出来事を思い出していた。私たちが互いに傷つけ合ったことや、肌を触れ合ったこと、心地よさを感じたことが、確かな実感として、少しずつ思い起こされた。そして家族を繋いでいるものの輪郭が、薄らと描き出されていくように感じた。 「家族とは何か」ということについて、今の私が語るのは難しい。ただ今は、カメラを通してこの場所にとどまり、二つの家族の語りを聞き続けようと思う。 白井茜引用元:<http://rcc.recruit.co.jp/gg/exhibition/24ph-shirai-akane/24ph-shirai-akane.html>
あっという間に20分が立ち、一人ずつコンセプトなどを語っていただきました。
a.o
まずは私から。選んだフォントは、A1明朝。人の体温を感じるような文字の滲みが、このタイトルに合っているのではないかと思いました。用意した紙にある文字は字間がすこしゆったりとしていて、穏やかな雰囲気を受けたので、一文字ずつ切り取って、字間をすこし詰めて、冷たさを出しました。 見直してみると、他の文字にタイトルの位置が揃っていないのが気になりますね…途中で席を外す時もあり、時間がなかったので焦ってしまいました…。(完全に言い訳です笑) 実際のチラシとは違うレイアウトにしたかったのに、考える余裕がなくて同じ配置になってしまったのも反省点です。
s.mさん
本人コメント
【コンセプトはノスタルジックです。家族写真の展示会ということで、写真の放つ印象やノスタルジックさを表現するために、A1明朝を選択しました。また、写真の周囲に余白を設け、額縁を表現しました。】
私の作品と結構似ていますね…。
『額縁』という余白の意味合いが個人的にとても良いと思いました。
A1明朝は画線の交差部分に墨だまりを再現してあるので、温かみだったり、郷愁を感じたりするのが魅力ですね。独特な静けさが写真の雰囲気にも合っていると思います。
m.iさん
本人コメント
【収まりよくするにはどうしたら良いか考えていましたが、 しっかりしたコンセプトを用意できていなかったのが本音です。 改めて目的をもってデザインすることが大事だと思いました。】
グリッドデザインがベースなので、あえてタイトル(A1ゴシック)は崩すことで、存在を際立たせていらっしゃいます。
今回は時間が短かったこともあり、コンセプトを考えるのが難しかったかもしれませんが、フォントを2種使ったり、レイアウトをずらしたり、色々模索していただけて良かったです!
k.iさん
人物名は周りの情報に合わせてゴシック体、タイトルは差別化するためにA1明朝体に。周りの情報にフォントを選ぶことによって、グルーピングがより明確になって分かりやすいです。
y.wさん
(なんと唯一2案提出していただきました…!)
a案
b案
本人コメント
【a案 ①白井茜さんの②個展「とどまって、聞いている」という順番で情報を伝えたかった。
b案 タイトルや個展背景、写真の持つ雰囲気から受けた印象を配置に落とし込んだ案。 「とどまって、」と「聞いている」をあえて分け、家族生活の時間の経過・長さのようなものを文字の組み方で表せないか思案しました。 経過した時間の中で色々な日常のシーンが繰り広げられたのだと思いますが、 そんな予感を感じさせられるタイトルの組み方ができないか探って辿り着いた配置です。(配置意図が伝わるかどうか、正解かどうかは分かりませんが、、、)】
短い20分の中で2案作成していただきました!凄いです!
a案は情報が分かりやすく、知らない人が見てもすぐに伝わるデザインだと思います。
b案は「とどまって、」「聞いている」の行間を広くとっているのが、私になかった発想なので、勉強になりました。「とどまって、」から次の言葉まで、文字が開くことによって、実際にとどまっている様子を体感させられるような、この展示会にとても合っていると思います。
k.kさん
本人コメント
【映画のフライヤーを意識した。実際に展示されている感じを“余白”で再現してみた。白井さんが家族とは「何か」を探ってみたが、未だ難しく感じているため、無機質なゴシック体を選定した。】
私も最初に受けた印象は「映画のポスター」でした。それを意図して出来るのが、力量の差を感じますね…!下に重みを出すことによって、上の写真がより際立つようなデザインレイアウトになっていて、写真に目が行きます。また、展示会タイトル名・人物名ともにゴシック体(游ゴシック)を選んだのもkさんのみで、みなさん『温かみ』や『落ち着いた』などを理由に明朝体を選んでいらっしゃいましたが、違う視点でフォントを選んでいたのが印象的でした。
こちらの展示会の内容をより深く読み取っており、説得力のあるデザインだと感じました。
今回、初めての試みだったので皆さんにとって有意義なものに出来るか不安でしたが、楽しみながらも互いに意見を出し合うことが出来て良かったです。パソコンで作業する時とは違い、フォントの数が決まっていたり、直接紙を触って作業したりと新鮮だったのではないでしょうか。
コンセプト発表後並べて、どれが一番良いか話し合いました!
限られた条件下の中で、ここまで受ける印象に違いが出るものかと驚きましたし、普段仕事をする上で全員同じものを作るなんて事は無いですので、皆さんの考え方の違いにも興味を惹かれました。皆さんの発表を聞いた後に出来上がったものを並べたのですが、やはりコンセプトに説得力があるものは、デザインに深みが出て目を引きました。
この検証会を経て、先輩方の意図の汲み取り能力の高さや、意図をデザインに落とし込む能力の高さを見習わなければならないと実感しました。
今回は1時間と時間が限られていたので、フォントだけに絞って行いましたが、写真なども自由に配置できるようにすると、より個性が出て楽しそうなので試してみたいです。